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 腹が減った。薄汚れた天井を見ながら思う。

 それならコンビニでもファミレスでも、チェーン店の牛丼屋でもなんでもいいから飯を買いに、あるいは食いに行けばいいのだが、到底そんな気にはなれなかった。この一ヶ月間の食生活が、どうやら彼の舌を変えてしまったらしい。

 一昨日までの一ヶ月というもの、彼は同居人の料理の腕に魅了され続けていた。

 いや、同居と言うのは正確ではない。はっきり言えば、同棲である。彼はノーマルだから相手が男と言う事はない。女である。

 彼女は、ぱっと目はどうという事もなかった。ごくありふれた容姿の女だった。性格も特別いい訳でも、我慢ならないほど悪い訳でもない。ただ整理整頓好きな点が、時々うんざりするのだが、それとても彼女の得意技を考えれば、どうという事もなかった。

 彼女の趣味は家事だった。そしてもっとも好きな事は料理をつくる事だった。特に、彼の好物である卵料理に関して言えば、もう手放しの合格である。他の事はさておき、卵料理に関してだけは彼を満足させた母親の味をしのぐ腕前。彼はそんなものにめぐり合えるとは思っていなかった!

 出会いは偶然、告白は必然、同棲は成り行き。かくして几帳面な彼女と味にはうるさくとも後は笊のような彼との共同生活が始まったが、破綻は早かった。

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