[PR]テレビ番組表
今夜の番組チェック

 メルクス公爵領の都城メルクスは雑多な空気に包まれていた。巨大な赤き竜ロスペロッソに襲われた地方にもっとも近く、もっとも大きな、という事はもっとも守りの堅いこの都市にありとあらゆる難民が押しかけてきているからだ。

 通常、これらの難民は様々な問題の種になる。食い扶持が増える為に生じる食料費の高騰。野宿、排便の不始末などの不衛生な環境から発生する疫病。それらを原因とする難民同士、あるいは原住市民と難民のいさかい、騒乱。その全ては為政者たちにとって悩みの種であった。

 しかしメルクスにおいては趣きが異なる。公爵政府は要領よく都城南側の空き地を整地し、あたかももう一つの都市を作り出すように難民たちを整理し、粗末ながらも天幕などを支給して当座の住まいを提供していた。

 水道もひかれ、公衆便所も厳密に定められ、近郊の農家が野菜などと交換にそれらの汚物を引き取り、公衆便所を利用する区画の難民達に配布された。

 しかも難民達はただ暇を持て余すだけでなく、難民達の居住地を囲むように新たに建設される城壁づくりの人夫として日雇いながらも賃金をもらう事ができるので、最低限の収入を得る事ができた。

 食品の価格は、一旦公爵政府が買い集め、それまでの市価よりも低い最高価格を設定して販売を許可する形をとられた。商人たちには不評だったが、しかし難民は元より従来の市民まで価格の下落を喜ばないはずはない。

top / next