| いまやメルクス公ジャーノの人気は天井知らずであり、彼こそが『天使王国』を再建する英雄となるという評判があたりに広まっていた。 当のジャーノ公もご満悦である。全て『ワーム』と名乗る吟遊詩人の少年に任せていたら、何の問題もなく民の人気が日に日に良くなるのだから、虚栄心の塊である彼がよろこばない筈はない。しかも難民対策や土木工事にかかる諸経費がまったく公爵の財布から出ていないのだから、機嫌が良くなるのも当たり前である。 『ワーム』の下で地獄の釜を開けるべく、都城メルクス全体に魔法陣を施している召喚術師も実際不思議に思っている。彼は建設現場の監督たちに図面を指し示して新たにつくる城壁が魔法陣の一部として機能するよう働いているのだから、実際に金のやりとりを見ている筈なのだが、それでも不思議に思えてならない。 『ワーム』から提供された資金は幻でも贋金でも何でもなく、本物の金貨なのだから。 「・・・悪魔というものは、このように金貨を汲み取るように得る事ができるものなのですか?」 召喚術師は何気なく『ワーム』に尋ねた事がある。だが彼は不思議そうな顔をするばかりだ。 「へー、そうなんだ。そいつは便利だね」 「便利だねって、私が聞いているのですが・・・」 「ああ。無から有を生み出すなんて、そんな事、地獄の諸君主方はおろか、神々にだってできないさ。もしできていたら、幾多の多次元で展開されているこの戦争そのものに意味がなくなる。自分たちに都合のいい世界を、いくらでも生み出せばいいのだから。それができなくて有限の世界を奪い合っている。それが我々の戦争の実態さ」 |